本来、これら全ての領域を検討を経てリスク評価が可能になるわけであるが、確率論的安全評価手法及びFSAの方法論の検討及び適用可能性の検討に主眼をおいたため、貨物船の機関室火災(図中の黒塗りの部分の1])と油タンカーの貨物倉の火災・爆発事故に絞って検討を行った。その概要についてはそれぞれ2.3.3、2.3.4に述べる。
2.3.3 機関室火災に関するFSAの試適用
(1)概要
FSAの暫定指針によるとFSAは5段階のステップがあるが、本研究はStep3迄を扱っている。更に、最初の研究の主目的がリスク評価手法の適用可能性の検討であったため、Step1やStep3については非常に簡単にしか扱っていない。また、FSA暫定指針に記述されているGeneric Shipは作っておらず、典型的と思われ同定の貨物舶を対象に検討を行っている。火災事故の副分類として、機関室火災を考えた。代表的なバルクキャリヤーのF.O.系統及びL.O.系統を例題としてFTA及びETAを使って、バルクキャリヤーの機関室内火災安全性評価を行なうと共に、規則要求に従って配置される安全設備の配置位置・個数の火災安全性制御へ及ぼす影響評価を実施した。
(2)ハザードの同定
機関室火災については、NKが1980年から1992年にNK船級船に起きた73件の機関室火災の事故事例を詳細に調査し、機関室火災の防止指針を取り纏めているので、この結果に基づき、優先度の高いハザード及び事故シナリオを同定した。同定されたハザードは、可燃性油の漏洩する可能性をもつ機器類であり、何らかの要因で漏洩した可燃性油が高温部等の着火源に接触することにより火災が発生し、事故拡大するシナオリを考えた。NKの報告書によれば、可燃性油が原因の機関室火災事故は全体の約55%を占める。
ハザード、原因、シナリオを纏めると以下のようである。
HAZARDS: Fittings having potential of combustible oil leakage. (ex. connections of pipelines to the main engine and generator engines)
CAUSE: Malfunction, Human Error (ex. Connections becoming Loose, Cracked or Disengaged due to engine vibrations.)
SCENARIO: When leaked oils splashing falls on the high temperature surfaces of exhaust gas pipes, turbochargers, etc., it could be ignited and advanced into Fire Accident. An example of the scenario whose consequence is considered as catastrophic fire is as follows:
1) Breakdown or failure of joints, valves and/or accessories occurred by some reason.
2) leakage of combustible oil from piping system
3) Contacting ignition sources such as hot surface in the vicinity.
4) ignition of combustible oil