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本事故の要因とその改善の可能性について、具体的に述べると以下の通りである。

入港管理でタグ不使用は罪であるが、もし悪天候であればこの程度のことは起き得る。

操縦性はIMOの操縦性基準や本事故などを契機とした入港管理強化で若干改善する。接触個所は様々な可能性があるが、タンカーの専用港ではやや良くなる。港湾設備では防舷材は比較的安価であり、対策努力は可能である。支援船の発火防止は、煙突の金網処理はかなり効果はあるが、居住区への気化ガスの侵入は防ぎにくい。以上の項目については、あまり抜本的対策はない。一番効果的なのは、船体構造の二重殼化であり、検討対象の油もれ事故の少なくとも3件に2件は油漏洩はない4)

接触による火災・爆発で本件と類似なものは約4%である。多くの事例解析を行わねば、普遍的な結論は得られない。本項では、確率安全評価を十分物理的に行えることを示した。

 

(5)結論

FSAは規則の制定に確率安全評価を用いることを目的としているが、本項はRR42の主旨から、特に規則の条項は念頭に置かずに、事象に対する確率安全評価を目的とした。

座礁・衝突は事故件数も多く、要因の確率値の導出は容易であり、統計・信頼性の知識を有すれば十分可能である。本項の研究は試行的な色合いが強く、今後より詳細で多くのデータ収集と解析が望まれる。

リスク解析や要因の管理要件の検討には、数理的な取扱は可能であり、成果は得られるが、普遍的結論を得るには今後より多くの解析が必要である。

座礁・衝突には多くの要因とそれに関連する規則が関係するが、これらの相互の整合を配慮して合理的な規則制定を行うのが望ましい。

参考までに:国際規則;SOLAS,MARPOL,STCW,IRPCS,ISM

国内規則;PSC,PILOTAGE,CLASS,MOL,MSAの各種通報 などが関係する。

 

参考文献

1) 造船研究協会RR42 平成9年度報告

2) 的場:座礁・衝突における人間信頼性に関する研究、造論、Vol.184(1998)

3) 造船研究協会RR42 平成7、8年度報告

4) 造船研究協会RR42 平成10年度報告

5) 造船研究協会RR42 平成11年度報告

6) 的場:座礁・衝突の確率安全評価における管理要件の最適化、造論 、Vol.186(1999)

 

 

 

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