(4)リスク要因の管理要件の検討(Risk Controle Option)
日本における座礁・衝突事故から大・中規模の事故を12ケース選び、事故のストーリーをF,ETA解析し、さらに事故に重大な影響を与えた要因の管理要件を検討した。4)5)6)
一例を示すと、事故は昭和40年に室蘭港でタンカーが棧橋に接触(単衝突)し、流出した原油に引火・爆発し10人の死者を出し、27日間燃え続け多大な被害を出したものである。図2.3.1.4に示すように油タンカーHは、晴天で潮流のない好条件の中、一旦機関停止後蛇効きを良くするため微速前進とした。引き船は待機していたが、自力接岸可能とみて、支援は行わなかった。接岸に失敗して、棧橋の定位置からずれたコンクリート部分に衝突し、サイドタンクの外板が破壊した。2mの破口であり原油が流出した。事故後直ちにオイルフェンスを張るなど、防火体制が取られた。綱取りのため、支援船Kが近づいたが、煙突の火の粉か発電機の火花で引火し、火災爆発した。この事故の発生経過を図2.3.1.5のFTAに、接触後火災に至る経過を図2.3.1.6のETAに示した。本事故での管理要件を定める目的事象として、ETAの最終事象である「消火不能の火災・爆発事故」を取り上げる。管理要件を最適にする手法は論文に6)詳細に述べるような動プログラミング法と遺伝アルゴリズムを用いた。表2.3.1.1は本事故に関係した要因とそれに関係する解析の諸数値を示したものである。(Xi)はその要因の一つ上の階層の事象に対する分岐確率であり、目的事象に対する感度PT(Xi)、制約条件を配慮した最適解を求めるための感度の初期値PTR(Xi)および演算により得られる最終感度PTR*(Xi)を示した。感度が減少することは、それに応じて目的事象「消火不能な火災・爆発」の確率がその割合で減ることである。