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2.3 座礁・衝突および機関室・貨物倉火災の確率安全評価

 

2.3.1 日本の事故を中心とした座礁・衝突の確率安全評価

 

(1)緒言

我が国の海難の年間総発生件数概略10,000件の内の50%に当たる海難が座礁・衝突・接触(単衝突)であり、最重要事故の一つである。大きな人命・環境汚染事故に至るものも少なくない。

一方確率安全評価の観点からは、数多い事故例の存在により各種要因の確率値の導出をし易い。また事例によりほぼ障害要因の同定が可能であり、統計学的見地からも事例解析で十分要因検討が可能である。

座礁・衝突の発生要因は、十分想像できるように人的要因が必ず関わり、場合により船舶の操縦性、航海機器および推進装置などの故障・欠如が関係する。

本節では、日本における事故事例解析を中心に、座礁・衝突の確率安全評価を行った結果の概要を述べる。

 

(2)障害要因の同定とデータベース(Hazard Identification)

世界の事故はLRのCasualty Returnsに詳しい。同資料は運航に支障があった事故の概略を述べたもので、大事故の発生確率などはそれに基づいた。

入渠時に修理して済ますような軽度の事故や部材の損傷状態の詳細はNKの検査・保険鑑定資料を参照した。

事故の発生要因や事故の詳細状況は海難審判庁や海難審判協会の資料を参照した。

座礁・衝突に関する事故発生要因や大事故の発生確率および周辺環境の状況確率の確率値を図2.3.1.1に例示する信頼性データシートに纏めた。126件のデータを収録した1)

座礁・衝突の人的要因などは、必ず重複しているが、主原因を取り上げた。

人的要因を構造・機器の要因と同列に論ずる手法や年度毎発生確率の分布については、別途論文2)ので検討した。全ての要因は正規分布で表現できる。

 

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図2.3.1.1 座礁・衝突の信頼性データシート事例

 

(3)リスク評価解析(Risk Analysis)

リスク評価は、各種要因により衝突などの事故事象に至る経過をFTA(Fault Tree Analysis)により解析し、衝突後、火災事故などの最終事象に至る時系列をETA(Event Tree Analysis)により解析した。

 

 

 

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