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2.2.9 避難シミュレーションプログラム

船舶災害時の人命損失数を推定するためには、火災あるいは浸水災害下における人間の挙動を模擬し、避難シミュレーションを行うことが必要である。本研究では、試計算対象船舶における火災災害時を想定した煙流動シミュレーションを行い、船内各部の煙濃度の時系列データを入力して、船内の避難を模擬するシミュレーションプログラムを開発した。避難シミュレーションプログラムは建築の分野でかなり長い歴史があり、種々の形式のプログラムが開発されてきたが、本研究では、RCOとして今後開発される種々の方法の効果を評価することを目的として、空間モデル及び避難者モデルとも、最も詳細なモデル化を実施した。

(1)空間モデル

空間モデルは、避難者が移動できる船舶空間のモデルであり、船舶を構成する種々の用途を持つ空間の位相的関係を表現できるように、フレーム知識表現方法により、図2.2.9.1のように階層的に開発した。最上層には、船舶フレームがあり、それは、複数のデッキフレームにより構成される。デッキフレームは、複数の空間フレームより構成される。空間フレームは、壁フレームその他により構成され、用途により、部屋、通路、階段の3タイプに分類す。壁フレームは、空間の仕切り、および、ドア、階段口、開口等の空間を接続するノードに分類する。また、空間の包含関係を表現するために、外空間、内空間の概念を導入した。ある空間の中に他の複数個の空間を含む場合、その空間は外空間として、また、他の空間を含まない場合、内空間として定義する。さらに、種々のフレームの幾何学的な形状を記述するためのフレーム(座標フレーム等)を定義する。なお、これらの空間モデルは、船舶入力モジュールから読み込んだ座標および接続関係データより自動的に生成される。

 

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図2.2.9.1 フレームによる空間モデル

 

(2)避難者モデル

(a) 避難者モデルの構成

避難者モデル14)は、図2.2.9.2のように2つの部分、現状認識モデル、避難実行モデルより構成される。現状認識モデルは、災害時の周辺の環境、災害状況、混雑度を認識する役割を担っている。避難実行モデルは、現状認識モデルから災害の現状に関する認識結果を得て、避難者の心理状態に応じ避難経路の選択および避難行動を実施する役割を担っている。さらに、その中の知識を処理するため、現状認識モデルに現状認識、個人属性知識ベース、避難実行モデルに長期、短期避難経路、個人属性知識ベースを導入した。

 

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図2.2.9.2 避難者モデル

 

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図2.2.9.3 水平通路における密度による歩行速度

 

 

 

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