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表2.2.3.3 各種災害における人命損失数、リスク

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これらの表より明らかなように、旅客船において、人命損失をもたらす主要な事故は、衝突、接触、座礁、浸水、火災であり、人命損失をもたらす災害は、浸水、火災が大半であることがわかる。その他の災害の件数は過半数を超えるが、リスクへの寄与は少ない。その他の災害のうち1件の人命損失(死者数+不明者数)が400人を越えているため、そのような特殊な災害を除けば、浸水および火災災害以外の災害の人命損失数の平均は非常に小さいとみなすことが可能と思われる。

また、図2.2.3.1を見てみると、火災災害、浸水災害とも、人命損失数の大きいところでF−N曲線が急激に下降しており、多くの人命が喪失する事故の割合が高いことを示している。表2.2.3.3の数値は、シミュレーションによるリスク算定の際の基本的な数値として用いる。

 

2.2.4 重大損傷の位置および大きさについての統計的性質

衝突および座礁に起因した船舶の損失事故一般について統計的検討を行ったが、船体に浸水して船体の安定性能上問題となる事故は衝突事故により船側外板に破口が生ずる場合のみであり、座礁による損傷は確率的にあまり問題でないため、衝突に起因する船側外板の破口(亀裂)損傷のみを取り上げた。

(1)破口の位置および大きさの統計解析

衝突に起因する損傷の形態としては、凹損、擦傷、破口(亀裂)がある。これらをひとまとめにした損傷全般については、損傷位置および損傷の大きさについての統計データAlexandrov3)、IMO MEPC4)がある。しかし、破口損傷のデータは極めて少なく、利用できるものは僅かにRR715)に示されているもののみであるため、RR715)の損傷全般の統計データを援用して破口の統計的性質を特定することにした。

RR715)によれば、NK検査記録書のデータベースを基に1994〜1995年度の衝突船損傷検査報告数472隻を調査対象とし、この内破口損傷を有する29件を標本として破口損傷の特徴について報告している。上述の結果、被衝突船船側部の破口を伴う損傷の確率を以下のように想定することができる。

破口損傷件数/全損傷数=29/472=0.06

破口の大きさについてはこの29件の標本を参照して統計解析を行った。以下において、L,B,Dは船の主要目(長さ、幅、型深さ)、P( )は確率分布を表す。

(a) 破口の位置

損傷一般について、損傷中心の船長方向位置(XS/L、XS:船尾からの距離)、および深さ方向位置(ZS/D、ZS:基線からの距離)の統計的性質については、Alexandrov3)およびIMO MEPC4)を利用することができる。これらの統計データを参照した結果、安全側の推定として、船長方向位置、深さ方向位置共に一様な確率密度分布と見なすことにする。破口の場合についても同様に、位置の確率密度分布は一様とみなす。

 

 

 

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