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2.2 船舶の確率論的安全評価システム(MSES: Marine Safety Evaluation System)の開発について

2.2.1 概要

本研究では、専門家判断等による恣意性をできる限り排除して、船舶の安全性を科学的、合理的に評価することを可能とする手法の開発を目標とした。

研究は第I期3年、第II期2年、計5年間で実施された。

第I期は、FSAのStep2で使用されるリスク評価システムのプロトタイプシステム(Marine Safety Evaluation System)の開発が目標であり、開発経過を適宜IMO/MSCにInformation Paperで報告し、MSC70のFSAおよびヒューマンエレメントの合同ワーキンググループにおいて、第I期の成果を口頭で発表し、各国から好意的な反応を得た1)

第II期では、第I期で明らかになった問題である、シミュレーションを実施すべき事故シナリオの膨大さを緩和する方法について検討し、有力な方法を開発するとともに、その方法を火災災害に適用して有効性を確認した。また、この過程において、MSESを使用したリスク評価手続きが確立された。

以下に、第I期、および第II期に実施した事項、開発されたプログラム群をまとめる。また、2.2.2節以降、MSESの概略を説明するとともに、MSESを使用したリスク評価の試行を示す。

(a) 第I期に実施した事柄2)

・MSESの基本設計

・MSES各モジュールのプロトタイプの開発

・LMIS海難データの解析、および事故発生確率の推定

(b) 第II期に実施した事柄

・事故シナリオの増大への対処方法を案出し、火災災害に限って、その方法を試行した。

・結果として、シミュレーションを基本ツールとしたリスク評価方法を確立した。

(c) 開発したプログラム等

1]船舶入力モジュール

2]浸水シミュレーションプログラム

3]火災シミュレーションプログラム

4]避難シミュレーションプログラム

5]避難シミュレータ

(1)システム全体構成

MSESの構成を図2.2.1.1に、MSESを使用してのリスク導出過程を図2.2.1.2に示す。図2.2.1.2で、太線の部分が程度の差こそあれ、現時点までに実施された部分である。なお、コストベネフィット解析部分は、本研究部会の対象外とし、英国の試適用にある手法の応用、あるいは他の既存の手法を基に、今後検討が必要である。FSAで本質的に重要なのはリスク導出の部分である。リスクは次の式にて求められる1)

 

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図2.2.1.1 MSES全体構成

 

 

 

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