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2. IMOにおけるSOLASII-2章の総合見直しの経緯

2.1 船舶火災統計

船舶火災は、その対策が種々に取られて来てはいるが、依然として船舶の安全にとっての脅威のひとつである。金湖らは、1978年から1995年の間のロイドの海難統計を分析して、このことを示している(表2.1)(1)

 

表2.1 船舶火災に関する統計例

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2.2 IMOにおけるSOLAS防火規則改正の発端とRR73の対応の開始

現在の海上人命安全条約(SOLAS条約)第II-2章防火規則に関しては、船舶の火災事故が発生した際にその手当てを施す改正が度々行われて来た(表2.2)。その結果、規則が繁雑になって来ており、またその規定が仕様的であるため、規則が想定していない新しい防火技術の導入が難しいものとなっている。そこで、第II-2章の防火規則を簡潔かつ応用性の広いものとすることが必要となった。

国際海事機関(IMO)の防火小委員会(FP)はその第38回会議(1993年6〜7月)において、我が国提出文書(FP38/6/14)、スウェーデン提出文書(FP38/6/8)及びイタリア提出文書(FP38/6/7)に基づいて、第II-2章の総合的改正作業の必要性を検討し、新しいSOLAS/II-2章の構築の構想を議論した。我が国はこの提出文書に基づいて、防火要件を機能別に分類して防火措置の内容を明確にすることや、火災に対する多重防護の考え方を示した。スウェーデンは、総合的な火災安全設計評価の導入により、自由度の高い船舶防火設計を実現することが可能であり、またそうすることが必要であると主張した。イタリアは、機能要件化の方向を進める一方で、機能要件及び仕様要件の双方をより明確にしてSOLAS防火規則を全世界的に統一して実施することも重要であると主張した。FP38はこうした意見を考慮に入れ、SOLASの防火規則である第II-2章の総合的改正作業の必要性について合意した(FP38/24)。

IMOの海上安全委員会(MSC)第63回会議(1994年5月)はFP38の意見に合意し、SOLAS第II-2章防火規則の総合的見直しを開始することを承認し、FPにその作業の遂行を委託した(MSC/63/23、MSC63/INF.13: Sweden)。

RR73においては、このIMOのMSC及びFPの動向に対処し、新II-2章に関する我が国としてのビジョンを定めてその内容を構築するために、平成7年度から平成8年度までRR733小委員会を設置し、さらに平成9年度からは「SOLAS/II-2章総合見直し作業部会(以後SOLAS/II-2/WGという)」を設置して、SOLAS新II-2章構築のための調査研究を進めてきた。

 

 

 

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