なお、タイ湾の一部に対する歴史的水域の主張については、カンボジアの部分を参照のこと。(フランス)トンキン湾の一部がベトナムの管轄権に服する歴史的水域を構成するというベトナム政府の主張については、これを裏付ける権原をフランス政府は承知していない。United Nations, The Law of the Seas: Current Developments in State Practice (E.87. V.3)p.146.(タイ)いわゆる「歴史的水域」を主張して、トンキン湾及びタイ湾の一定海域を取り込み、内水制度に服せしめようとするものに関しては、適用可能な国際法の原則及び規則に基づいてその主張を正当化することはできないというのがタイ国政府の見解である。United Nations, The Law of the Seas: Current Developments in State Practice(E.87.V.3)p.147.シンガポールの抗議については、参照、United Nations, The Law of the Seas: Current Developments in State Practice No.2 (E.89. V.7)p.84.
(16) 中国は、1887年のフランス・清王朝間国境条約がいかなる意味においてもトンキン湾の海上区域の境界確定をしていないことを指摘し、同湾には海上の境界線は存在しないから、ベトナムの主張は違法かつ無効であると述べている。また、西沙群島及び南沙群島が中国の「神聖な領土の不可分の一部」であることを繰り返し宣言している。United Nations, The Law of the Seas: Current Developments in State Practice (E.87. V.3)p.145.なお、中国とベトナムとの陸上国境線については、1999年12月30日に国境線確定協定が締結されたと伝えられている(参照、同日付の共同通信ニュース)。
(17) United Nations, The Law of the Sea: National Legislation on the Territorial Sea, the Right of Innocent Passage and the Contiguous Zone(E.95. V.7)p.76; United Nations, The Law of the Sea: Baselines: National Legislation With Illustrative Maps, (E.89. V.10) pp.119ff..
(18) 米国は、1987年6月17日に、ベトナム・カンボジア間のこの協定がタイランド湾の一部を両国の歴史的水域であることを前提としていることについて抗議している。歴史的水域が有効と認められるのは、(A)国家がそれを公開かつ公然と主張していること、(B)国家が長期間継続して自国権能を実効的に行使していること、(C)他国がそれを黙認していること、という条件を必要とすることを指摘し、両国の主張する歴史的水域がいずれの条件も満たさないというのが米国の見解であり、自国と自国民の権利を留保すると述べている。