(10) 中国の1992年領海及び接続水域法が、自国の陸領土として「台湾及びその付属各島(魚釣島を含む)」を規定し、尖閣諸島を中国の島であると宣言したことについての評価について、参照、芹田健太郎・島の領有と経済水域の境界確定(有信堂、1999年)225頁。
(11) 北京1996年5月15日新華社(1996年5月17日中国通信)、United Nations, Law of the Sea Bulletin No.32(1996)p.37.; United States Department of State, Limits in the Seas No.117(China, 1996).
(12) 米国地理学者は、直線基線の長さの限界は24カイリという立場をとっていることにくわえ、中国本土の直線基線は、全体として、海岸線が著しく曲折しているか又は海岸に沿って至近距離に一連の島がある場合(国連海洋法条約第7条(1))の要件を満たしていないこと、直線基線の基点として海上の地点、低潮高地、本土から領海の幅を越える距離にある低潮高地、恒久的施設が建設されていない低潮高地、さらに孤立した島が用いられていること、さらに国際海峡である海南海峡を直線基線により内水として取り扱っていることなどを指摘している。
また、西沙群島は複数の島と礁から構成されているが、そもそも直線基線の要件を満たすものではない。さらに、1992年法では群島の名称を用いているが、そもそも、群島基線に囲まれた群島水域は、国家全体が群島から構成された群島国に認められたもので(国連海洋法条約第46条)、それ以外の国が群島基線を引くことは認められないことも指摘している。参照、United States Department of State, Limits in the Seas No.117(China 1996).
ベトナムは、中国の領海基線が西沙群島に設定されたことに対し、同群島がベトナムの領土であるとして自国の重大な主権侵害であると指摘するほかに、中国の直線基線の設定方法についても抗議している。すなわち、中国が西沙群島に群島国たる地位を与え、広大な海域を中国の内水に取り込んだことが国連海洋法条約の条項に違反するものであること、雷州半島(Leizhou peninsula)東側に中国本土から海南島に直線基線を引いたことは、国連海洋法条約第7条及び第38条に違反するものであり、これにより相当の海域を内水化することになり海南海峡(Qiongzhou strait)における国際航行の権利及び自由を妨げるものである。これを、ベトナムはすべて受け入れることはできないというのである。United Nations, Law of the Sea Bulletin No.32(1996)p.91.