(3) ベトナム(図4)ベトナム主張の領海基線
ベトナム政府は、1982年11月12日、ベトナムの領海基線に関する声明を発した(13)。その内容の概略は、次のとおりである。1]領海基線は直線基線により構成されること、2]カンボジア側の基線の開始点は、Point 0とし、それはベトナムの直線基線とカンボジアの直線基線が出会う地点<Tho Chu Archipelago (Nhan Island)と Paulo Wai Island(カンボジア)と結ぶ直線上の海上の点>であり、終点はCon Co Islandとすること、3]べトナムと中国の間にあるトンキン湾の海上の境界線は1887年6月26日のフランス・中国清王朝間の国境画定条約に従って引くこと、トンキン湾のベトナムに属する部分は歴史的水域を構成し、内水の制度に従うこと、4]Hoang Sa及びTruong Saの群島の領海を測定する基線は1977年5月12日ベトナム政府声明に従って決定されること。
ベトナムの領海基線の主張に関し、直線基線の採用に対しては、米国、タイ、シンガポール、中国、フランス及びドイツが抗議しており(14)、トンキン湾の歴史的水域の主張に対しては、米国、タイ、シンガポール、フランスが抗議している(15)。さらにトンキン湾の海上境界線と群島の領有主張について、中国が抗議声明を発している(16)。
(4) カンボジア(図5)カンボジア主張の領海基線
ベトナムとタイを隣接国とするカンボジアは、海岸線が短いこともあり、隣接国との海上境界線について、複雑な対応をとっている。カンボジア政府はベトナム政府との間で、1982年7月7日、「ベトナム及びカンボジアの歴史的水域に関する政府間協定」を締結し、その中で、タイ湾の一部海域を両国の歴史的水域であると主張した。すなわち、ベトナム領のTho Chu Archipelago(Nhan Island)とカンボジア領のPaulo Wai Islandと結ぶ直線の内側水域である。この協定を受けて、カンボジアは、1982年7月13日に領海及び接続水域に関するデクレを発しているが、同デクレによれば、領海の幅員を12カイリとし、領海基線は海岸の地点と最遠距離にある島の最遠距離にある地点とを結ぶ直線基線である。