これによれば、島について、中国当局作成の英文では、すべて島(islandとIsland)の語が当てられているが、国連海洋法条約批准時の宣言では群島及び島(archipelagos and islands)の語が用いられており、さらに元の中国語では、これらは、1]本土及びその沿岸島嶼、2]台湾及びその付属各島、3]澎湖列島、4]東沙、西沙等の群島、5]その他の一切の島嶼、の五種類の島に分類されている。これは、中国がこれらの島を同一に取り扱うのではなく、性格の異なるものとして捉えているように思われる。1]の沿岸島嶼とは、本土に引いた直線基線よりも内側の島 すなわち海南島を含み、2]の台湾とその付属諸島及び3]の台湾海峡にある澎湖列島を別扱いとし(10)、4]の南シナ海にある東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島は公海によって隔てられた群島であり、本土の沿岸島嶼とは別扱いしている。さらに、西沙群島(Xisha Islands, Paracel Ialands)には28ポイントの基点を結ぶ直線基線で囲まれた水域を内水と性格づけていることになる。5]その他の島嶼とは、すなわち沿岸島嶼でもなく、本土から遠距離にある島であって群島でないものということになる。
(オ) 直線基線(図3)中国主張の領海基線
1996年5月15日、中華人民共和国政府は、「領海基線に関する中華人民共和国政府の声明」を発した(11)。これには、本土領海の一部基線と西沙群島の領海基線とがもりこまれており、1992年法に基づいて、中国本土と西沙群島に引かれる直線基線を具体的に示したものである。
この1996年声明によれば、中国本土に引かれた49ポイントの基点を結ぶ直線基線は、山東半島から海南島南側までのすべての海岸沖合に引かれているが、これに尽きるものではなく、その他の基線もこれから発表するとされている。中国の1958年宣言では渤海湾と海南海峡が内水であると宣言していた立場に変更がないとすれば、中国の大陸本土に関する領海基線はすべて直線基線から構成され、通常基線を採用する海岸線は一部の島のみに限定しているものと考えられる。
1996年声明に定められた直線基線の長さは、48本のうち25本が24カイリを超え、さらに3本が100カイリを超え、最長は121.7カイリとなっている(12)。なお、香港及びマカオの水域は、いずれも直線基線の内側の内水内に含まれることになる。