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しかし有害行為の列挙のなかには同時に沿岸国法令違反となり、沿岸国がこれら法令違反の処罰のために執行管轄を行使することが、国内法上の保護法益を確保し、あるいは法令違反の再発を防止するために必要と判断する可能性のある場合もある。たとえば「沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上または衛生上の法令に違反する物品、通貨または人の積込みまたは積卸し」(19条2項(g))、「故意かつ重大な汚染行為」(同(h))、「漁業活動」(同(i))、「調査活動または測量活動」(同(j))、「沿岸国の通信系または通信施設への妨害」(同(k))などがこれにあたるであろう。これらは、沿岸国の無害通航にかかる法令制定権に関する規定(21条)に列挙される事項に包摂されるものではあるが、無害通航船舶についてはこの列挙が単に立法管轄を特定したものであり、領海を通航する外国船舶もこれら沿岸国法令を遵守する義務は負う(21条4項)ものの、たとえこれに違反しても直ちに通航そのものが有害となるわけではなく、従って沿岸国は法令違反があっても通航中の外国船舶に当然に執行管轄を行使することはできるわけではない。これに対して領海における外国船舶による沿岸国法令違反の行為が同時に有害行為の「みなし」規定に該当するような場合には、沿岸国は通航中の船舶に対して沿岸国法令を適用するために執行管轄を行使することも認められることとなろう(17)

たとえば外国船舶が通航中に漁業を行えば、それは外国人漁業規制法違反を構成するが、同時にその通航自体が有害となるから、沿岸国はこれを拿捕し、同法違反として処罰することができる。また出入国管理法に違反する人の積込み、積卸しがなされれば、沿岸国が国内法上これを出入国管理法令への違反の未遂として処罰するかどうかは別として、通航自体は有害であるから沿岸国が執行管轄権を行使して必要な措置をとることは可能である。 つまり有害通航となることによって、 沿岸国は法令違反を処罰するために必要な措置、たとえば通航中の外国船舶の逮捕、引致、裁判などの措置(海上保安庁法上の「海上における法令の励行」)をとりうる。もっともこの場合、沿岸国の判断として、これら船舶を自国領域に取り込んで処理するか、領海外退去要請という形でわが国領域から排除することによって処理する方が妥当であるかは、別途、事件の具体的状況において判断されるべきことであろう。

 

 

 

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