一種の法律行為としての義務賦課行為の形をとり、相手方の意思を命令行為により拘束するという法制を明確にすることである。勿論、「停船命令」を発しう得る場合等の要件は厳格に規定されるべきであるが、そうすることにより犯罪としての追跡と武器の使用も可能となるであろうし、海上社会の特性に対応することにもかなうであろう。そして、「停船命令」及びそのための最小限の手続きを法定するならば、国内法の、取り分け法治主義の観点からも望ましいと思われる。
(注)
(1) 村上暦造、領海警備の法構造、海保大研究報告45巻1号(通巻71号)56頁。そこでは、「領海警備において重要な点は、それは、当該外国船舶の通航が無害であるか否かを問わず、この種の領海内の外国船舶に対応するために沿岸国がどのような国内法上の規制をかぶせることができるかであり、その国内法令に基づいてどのような執行措置をとるかが問題である」とする。
(2) 自衛隊法第82条。安田寛、防衛法概論189頁。
(3) 山本草二教授は、海洋法条約の概念は、軍としての権力の発動と、警察権の発動とは概念上峻別しているとされ、成田頼明教授は、法令違反は海上保安庁が、領海侵犯は国際法的には自衛権の発動の問題になるとされる(座談会・海と法、ジュリスト753号(1981)29頁以下)が、村上教授は、従来の軍事作用と警察作用を峻別し、領海警備をそのいずれかに性格づけることには無理があると述べる(注(1)論文67頁注2)。
(4) 官報資料版第2733号付録10頁。
(5) 平成11年3月25日、産経新聞朝刊。
(6) しかしながら、読売新聞社による、領海警備強化のための緊急提言、どう守る?日本の安全(冊子)で主張している、「領海警備にあっては、世界各国に比べて、極めて抑制的な武器使用の基準を国際法規・慣例にそって緩和することも重要だ。」という指摘は正鵠を得ていると考えている。
(7) 国連海洋法条約第110条は、臨検の権利について規定しているが、その手続や方法についての規定ではない。
(8) 林久茂、公海上における外国商船に対する干渉、海上保安大学校昭和39年度研究報告(第1部)183-4頁。McNair-Oppenheim's International Law, 4th ed. Vol.I, p.497.