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といった、海という場の特性を勘案すれば、法適用対象や適用状況においてかなりの差異が存在するように思われる。これらのことを踏まえて、庁法第20条に規定する、「海上保安官及び海上保安官(補)の武器の使用については、警察官職務執行法第7条を準用する。」の限界(自衛隊法第93条の場合も含めて)について検討する必要があるものと思われる。

日の目を見なかったが海上保安庁法に規定されようとした最初の案では、第19条は現行と同じであるが、第20条は、「海上保安官は、その職務を行うに当たり、特に自己又他人の生命又は身体の保護に関し、やむを得ない必要がある場合を除いては、武器を使用してはならない。」とし、第21条で、「巡視警戒に任ずる船舶を指揮する海上保安官は、第18条第1号の規定により船舶に対して進行の停止を命じた場合において、当該船舶が停止しないときは、警告のため空砲二発を発して命令に従わせることができる。この場合において、船舶が警告を無視し停止しないときは、船首を超えるように実弾一発を発することができる。船舶がなお停船命令に従わないときは、当該船舶を砲撃することができる。」となっていた。そして、「第21条は巡視警戒に任ずる船舶に搭載する大砲使用の手順に関する規定である。本条はかかる場合の砲撃に関する国際慣行に従ったものである。」と説明されていた(29)のである。

このように、国際慣行といえるような一定の手順が認められるものであるならば、それと整合的になるように国内法の規定の内容を見直すことが必要であるようにも思われる。それにもまして、我が国の法制において、相手船に停船の義務を課すべき、「停船命令」について、法律にはどこにも規定されていないことが問題である。国際条約も、諸外国の立法例においても、「停船命令」とそれに基づく「停船強制」を重要なこととみており、手続規定としても、法律として明確に整備がなされることが望ましいのではないかと考えられる(30)。つまり、「停船命令」を発し得る権限を法定し、相手船に「停船義務」を明確に発生させ、その義務違反に対して比較的重い罰則(長期を3年以上にする)を定める。

 

 

 

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