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この要件はかなりの部分、国連海洋法条約第19条2項に対応し、当該項目は無害でない通航を防止するための領海警備の発動要件と位置づけられている。国連海洋法条約で無害でない航行の例としてあがっている(a)及び(b)がなく、代わりに、シで「その他のわが国の安全又は秩序を害する行為」という包括的な規定が置かれている。また、その内、ウ、カ、キ、ク、ケ、サについては「個別法令の罰則を加味しながら、詳細な検討が必要」との注釈がついている。

そして第4の領海における海上保安官の権限の部分では、第2に規定する外国船舶の通航秩序の励行を図るため、(1)の領海警備の権限を行使する「必要と認める場合」の例として、次のような船舶を発見したときとしている。すなわち、ここでは船舶の行為のみならず、船舶の外観をも基準として、「1]進路、航行状態が定まらない行動不審の船舶、2]巡視船を見て逃走しようとする船舶、3]正規の信号、灯火を掲げていない船舶、4]国籍、船名等が明らかでない船舶、5]固有の用途以外の目的に使用されている船舶、6]停泊又は投錨するために特に設けられた錨地等の海域以外の海域に停泊又は投錨している船舶」を発見したときとしている。かかる船舶に対する書類提出、立入検査のための停船命令を行うに際して、(3)の武器の使用のところでは、「1]当該外国船舶が停船しない場合には、必要最小限度の範囲内において、銃・機銃・砲を使用することができる」と規定し、同じく、領海外退去を命じたにもかかわらず、退去しない場合には、「必要最小限度の範囲内において、銃、機銃、砲を使用することができる」と規定している。さらに、「立入検査を行なう場合には、拳銃又は小銃を携帯し、自己の生命等の保護のため必要最小限度の範囲内で、当該武器を使用することができる」と規定している。ここでは、現行の法令にうたわれている「警察権発動の条件及び程度は、社会通念上、認容することのできない障害に対してだけ発動することができ、またその障害を除去するために必要な最少限度にとどまらなくてはならない」という「警察比例の原則」の考え方が採用されている。『海洋法条約に係る海上保安法制第2号』(海上保安協会、平成7年3月)、64-72頁参照。同要綱の分析については、田中、前掲論文、53-55頁参照。

70 『海上保安の現況』(注(1))、8頁。

71 David L. Larson, Security Issues and the Law of the Sea, University Press of America, 1994, p. 206.

 

 

 

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