27 例えば、韓国の領海法(1977年12月31日法律第3037号)は、第5条に「外国船舶の通航」の規定を置き、1項で「外国船舶は、大韓民国の平和、公序又は安全保障を害しない限り、大韓民国の領海を無害通航することができる」と海洋法条約第19条1項をほぼ踏襲しつつ、「外国の軍艦又は非商業用政府船舶が領海を通航しようとするときには、大統領令の定めるところにより関係当局に事前通告しなければならない」との独自の要求を付け加えている。もっとも、仮に事前通告なしの通航が行われたとしても、その違反をもって直ちに通航の無害性を否定しうるかどうか疑問である。そして、2項で第19条2項を下敷きにして、無害でないとみなす13の行為を列挙している。注目されるのは、5号で「潜水航行」を無害でない行為に加えていることである(ということは、韓国政府は、第19条2項は米ソ統一解釈がいうような網羅的規定ではなく、例示規定であるとの解釈を前提にしていることになる)。そして、第6条で「外国船舶(外国の軍艦及び非商業用政府船舶を除く)が第5条の規定に違反した疑いがあると認められるときには、関係当局は、停船、捜索、拿捕その他必要な命令又は措置をすることができる」と規定し、強制措置につき国内法化している。韓国の領海法については、深町公信「国連海洋法条約に関連する韓国の国内法」『関東学園大学法学紀要』第13号参照。
28 安冨、前掲論文、27頁。
29 もっとも、ここで対象とされている船舶はあくまで「軍艦以外の船舶」であった。M. Whiteman, Digest of International Law, vol. 4, p. 374.
30 Annuaire de l' Institut de Droit International, Vol. 13(1894), pp. 329-330. 林、前掲書、42頁。
31 本条の評価をめぐっては議論が分かれている。林教授は、「ここの『財政的利益』は関税に限らず衛生をも含めて沿岸国が設定した広範囲の法令違反事項であるとコメントされている」ことを捉えて、「法令違反=有害という方式をとっていた」として本条を接合説の立場をとったものと理解する。林、前掲書、43頁。これに対して、山本教授は、「かなり微妙な折衷説に傾いた」ものとし、「きわめて微妙な表現ながら、通航船舶の外形的行為の実行そのものではなく、それを行う目的・意図を基準にして、通航の有害性の有無を判断しようとするものであり、その限りでは法令違反を要件としているとはいえず、分離説に近いとみることもできよう」とされる。