注
1 例えば、昭和60年4月25日に発生した「第31幸栄丸」事件は、先の能登半島沖の事例と酷似した事例である。宮崎県漁業取締船が「第31幸栄丸」という船名の19トン型はまち運搬漁船に立入検査を実施しようとしたところ、それを忌避し高速で逃走した。油津海上保安部は、実在する第31幸栄丸との同一性に疑いがあり、また逃走能力等から不審船との疑いが生じたため、巡視船艇23隻、航空機4機を出動させたが、中国杭州湾沖童島東方付近で見失った。『海上保安の現況』(海上保安庁、平成11年9月)、2-3頁参照。
2 海上保安庁によれば、「領海警備は、我が国の平和、秩序、安全を害する外国からの諸活動に対して、我が国領海内における主権を確保するために行われるものであり、領海内における外国船舶の無害でない通航や不法行為の監視取締りを任務とする警察活動である」と定義される。同上、1頁。
3 村上教授によれば、「『領海警備』とは、領海そのものの利益を守るための警備ではなく、むしろ領域(陸域)の利益を守るために領海においてとられる措置」という性格をもつとされる。村上暦造「領海警備の法構造」『海上保安大学校研究報告』第45巻1号、46頁。国境警備については、同「西ドイツにおける国境警備制度」(『我が国の新海洋秩序第3号』(海上保安協会、平成2年3月)所収)18-29頁、同「ドイツ国境警備法と海洋法」(『新海洋秩序と海上保安法制』(海上保安協会、平成6年3月)所収)1-68頁参照
4 村上、前掲論文(「領海警備」)、55頁。
5 すでに、本主題についてはかなりの議論の蓄積がある。本協会の研究会の主な作業に限っても、例えば、山本草二「無害通航に当たらない領海侵犯」(『我が国の新海洋秩序第3号』(海上保安協会、平成2年3月)所収)71-89頁、村上「国籍不明の船舶に対してとりうる措置」(『我が国の新海洋秩序第2号』(同、平成元年3月)所収)25-47頁、安冨潔「無害でない外国船舶の通航と海上保安官の職務権限について」(『海洋法条約に係る海上保安法制第1号』(同、平成6年3月)所収)17-39頁、田中利幸「外国船舶に対する執行と国内法の整備」(同上)40-55頁がある。