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フィジーは、提案理由を説明して、「無害通航は、依然として沿岸国の平和・秩序・安全との関係で決定されるべきであるが、いかなる活動が実際に沿岸国の平和・秩序・安全を害すると見なされるかを決定するために、適用される客観的な基準が求められる」と述べている。*25ここで注意すべきことは、第一に、具体的な活動のリストは、フィジー提案3条1項を客観的に基準化したものであること、第二に、活動のリストは、提案3条2項が「以下のいかなる活動に従事している場合も」と規定していることから、船舶がそれらに従事しているときに有害であると判断されること、第三に、したがって、提案3条1項も、提案3条2項の基準が行為態様に着目した客観的基準であることから、行為態様を基準として無害性を認定する規定であると考えられていることである。

1975年の非公式単一草案において、国連海洋法条約19条の原型が規定されるまでの段階で、イギリス提案、マレーシア・オマーン・モロッコ・イエメン4ヶ国提案、東欧諸国提案は、いずれも活動リストを伴う規定案であったが、「……しない限り、外国船舶の通航は、沿岸国の平和・安全・秩序を害するとはみなされない」という規定ぶりであった。このような規定ぶりをとれば、活動リストが「包括的」であり、沿岸国の平和・安全・秩序を害する場合というのは、活動リストに含まれる場合に限定されるという解釈が自然である。フィジーが、「……とみなされる」という肯定的規定ぶりの修正提案を出して、非公式単一草案16条2項は、現国連海洋法条約19条2項と同様に、「……とみなされる」という肯定的規定ぶりである。ただし、このことは、活動リストが「包括的」ではなく「例示」にすぎないという解釈に支持を与えるとは必ずしもいえない。なぜなら、先にフィジー提案の提案理由をみたように、フィジーは活動リストにより「客観的基準」を設定することを重視しており、そうした趣旨からすれば、フィジーの「……とみなされる」という表現への修正提案が、リストの「包括性」を否定し、沿岸国による有害性の判断の裁量を許容することを理由としているとは考えにくいからである。

その後、現国連海洋法条約19条2項の(l)に対する批判を含めて、19条2項の列挙するいくつかの活動の規定について修正案が提案されて、いくらかの変更が行われて19条2項となった。*26

 

 

 

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