(3) 国連海洋法条約19条の解釈としてのフランスの1985年デクレ
(ア) 国連海洋法条約19条の無害通航の「無害性」に関する規定は、1930年ハーグ法典編纂会議以来、重要な議論の行われてきた問題である。*23ここでは、フランスの1985年デクレが惹起する争点を中心として、国連海洋法条約19条の解釈という観点からこれを考察しておきたい。
(イ) 国連海洋法条約19条1項は、1958年領海条約14条4項とほぼ同文である。しかし、領海条約14条4項については、無害性の認定基準・要因について、行為態様以外の基準や要因も認める解釈も可能であるが、この点を、国連海洋法条約19条1項が踏襲したといえるわけではない。*24国連海洋法条約19条の起草過程の初期において、たとえば、フィジー提案が、提案3条の1項で領海条約4項を反復し、提案3条2項で、沿岸国の平和・安全・秩序を害するとみなされる活動のリストを挙げている。