(ウ) さらに、「目的」の強調というが、そのことの意味と意義をみておきたい。上記の学説によると、「通航に関係のない」行為を行う目的の船舶は、無害通航権をもたず、その領海への入域が拒否され、領海における存在自体が排除されるという。もし、目的を強調することの実質的な意義が、船舶が有害と推定される具体的な活動に従事していない段階でも、これに対して沿岸国が措置をとることができる、という点にあるのであれば、同じ意義は、国連海洋法条約25条、そして、これを写したフランスのデクレ5条にいう「防止措置」の適用によっても実現されるともいえる。ただし、無害でない通航を「防止」するための措置を取る段階では、有害性を認定して無害通航の権利自体を否定できるかは、国連海洋法条約19条2項の「いずれかに従事する場合」からすれば、否定的に解される。したがって、この「防止」の段階で沿岸国が取れる措置は、外国船舶が無害通航権を有していても、なおこれに対して取りうる措置に限定されることになる。*16