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(ウ) 第二の点については、国連海洋法条約は19条の1項と2項の関係について、解釈の相違を導いているが、*11フランスのデクレが、同じ条文の中で、第一文と第二文に国連海洋法条約19条の1項と2項を規定したとしても、第一文と第二文の関係として、同じの解釈の相違を導くことは考えられる。ただし、同じ条文の中でも、項をわける場合と、項をわけないで第一文と第二文にわけるだけの場合とを比較して、前者の方が、各々の独立性を強く表明する起草趣旨であるという解釈はありうる。それに従えば、国連海洋法条約では19条1項と2項に項が区別されているのに対して、フランスのデクレでは、項をわけなかったことからすれば、同じ項の中の二つの文は、国連海洋法条約の19条1項と2項よりも、相互の関連性が強められているという解釈になる。

具体的には、フランスのデクレ3条の第一文は上記のとおりであり、第二文に、国連海洋法条約19条2項の(a)から(k)と同様に、11の行為態様の列挙が付随している。そこで、第一文と第二文(および付随する行為態様の列挙)との関連性が、国連海洋法条約の19条1項と2項との関連性よりも強いとすれば、以下の解釈になる。

まず、列挙されている行為態様と、デクレ第一文の意義については、デクレ第一文の意義も、行為態様により解釈されるということである。第二文に付随する11の列挙は、「とくに(notamment)」とされているので、それ以外の場合でも、有害となることは認める趣旨であり、例示列挙であると解される。これについては、国連海洋法条約が明確にはしていない点であり、デクレの方が、 列挙は限定列挙ではないという趣旨を明白に示しているといえる。したがって、11の列挙に該当しなくても、有害な場合はあるが、それは、通航に伴う行為態様において、有害性が認定される場合であるということである。

しかし、デクレ第一文については、第二文および第二文に付随する列挙とは切り離して(第二文それ自体と列挙とがいずれも「行為態様」に着目した有害性を規定しているとしても)、デクレ第一文は、「行為態様」以外の要素を認める趣旨であるという解釈も否定はしきれない。先に述べたように、国連海洋法条約19条は、1項と2項とを独立の項としているのに対して、デクレでは、一つの条の第一文と第二文である。

 

 

 

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