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(イ) 第一の点については、無害通航に関する規律が国際法であることを規定しなかったというのは、無害通航を決定しこれを規律するのは国内法である、という意図の表明と解することはできる。とくに、デクレの1条が、「外国船舶は、フランス領海において、このデクレによって決定される無害通航に関する規則にしたがって、通航の権利をもつ」と規定していることをあわせて読めば、やはり、無害通航およびそれに対する規律は国際法ではなく、フランス法(このデクレ)によってこそ実施される、というフランスの意図表明をそこにみることができる。

もっとも、デクレ1条が、国連海洋法条約21条の沿岸国の法令制定権を受けてこれを規定していると解することもできなくはない。しかし、21条によれば、沿岸国の法令制定権自体も、国連海洋法条約および他の国際法の規則に従うことが条件になっているにもかかわらず、フランスのデクレ1条は、この国際法による制限を規定してはいない。この点は、海域における強制措置や実力の行使に関する1994年法の1条が、国内法とならべて国際法の尊重の確保を目的として規定していることとは対照的である。したがって、1985年デクレ1条および、3条の無害通航に関する規定において、国際法による制限が明記されなかったのは、やはり、無害通航の決定及び無害通航に対する規律は、国内法によって行われるという、フランスの意図の表明であると解される。なお、同デクレは、国連海洋法条約21条のみならず、24条(領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならない沿岸国の義務)に対応する規定ももたない。

論理的には、デクレ1条により、「国際法上の」無害通航の権利を否定する結果になるともいえるのであって、この点で、デクレが国際法違反であるということはできる。しかし、実質的に、国際法違反が問題になるかについては、フランス国内法上の「無害性」の基準が国際法に適合的であるかの判断こそが重要である。これは、第二、第三の点に関連する問題である。

 

 

 

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