日本財団 図書館


027-1.gif

このように、フランス国内法制上、領海が領域の一部を構成することが明白に宣言されたのは、最近のことである。それゆえに、無害通航に関する領海警備が、根本的な保護法益として領域主権を根拠にするとはしても、領海における一般法益が規定されていない限りは、領海警備の実質的で具体的な根拠として、「無害性」の認定基準が重要な意義をもつことになる。そこで次に、こうした視点をふまえて、1985年2月6日の無害通航に関するデクレを検討する。

 

3. 1985年2月6日無害通航権に関するデクレ

 

(1) デクレ3条について

(ア) 同デクレ2条は、通航に関して、国連海洋法条約と同様の規定をおいているが、同3条は、以下のように規定する。

通航は、国家の平和・秩序・安全を害しない限り、無害である。外国船舶の通航は、領海において、当該船舶が通航とは無関係のいかなる行為に従事する場合であっても、国家の平和・秩序・安全を害するとみなされる、とくに……

この後に、国連海洋法条約19条2項の(a)から(k)と同様の内容が、1-11項として列挙されている。このような3条において、特徴的なことは以下の点である。第一に、国連海洋法条約19条1項の第二文、すなわち、「通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行われなければならない」という文を削除していることである。第二に、国連海洋法条約19条の1項と2項との区別をなくして、デクレ3条に集約していることである。第三に、国連海洋法条約19条2項の列挙事項のうちで、(l)に対応する規定を列挙事項の中にはおかず、その趣旨を具体例の列挙に先行する一般規定文(デクレ3条第二文)の中に規定していることである。以下、順に検討する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION