右の第2に掲げた船舶交通警察は、その性質上、商業輸送、漁業、海底資源開発、余暇等の様々な海洋利用について共通項となるものであり、海上交通警察の中でも中心的なものと見ることができる。国連海洋法条約に基づく有害通航に対して沿岸国が必要な措置を行う作用も、船舶交通警察に含まれる。
海上交通警察に関する法執行は、国軍(海軍及び憲兵隊)、財務担当大臣(税関)、運輸担当大臣(海事局)、産業担当大臣の4者によって分担されるが、中でも、海軍と海事局が主要な執行機関とされている。まず、海軍軍管区司令官は、領海内での外国船舶の交通に対するコントロール、海洋汚染に関する環境事故に対する緊急の措置、公海での追跡権行使などを分担する。なお、海軍による執行といっても、海上交通警察に関する規範の適用と監督に関する非軍事的任務の枠内にあることに注意を要する。他方、海事局は、港及び錨地における段階と、沿岸通航の段階との2段階において法執行活動を分担している。すなわち、港及び錨地の内部において、船舶の行動は、港長(officier de port)の公権力的な監督に服している。港及び錨地以外の沿岸海域では、海事局に与えられた海上交通警察の権限は、憲兵隊及び税関の協力の下、海事局の管轄地域の長によって執行される場合と、当該地域を管轄するCROSSによって執行される場合とがある。