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1 中華人民共和国成立後の国内情勢と日中関係

【現代中国の社会情勢】

第二次世界大戦の終戦後の1949年、約3年にわたる国民党との内戦を制した共産党により中華人民共和国が建国されたのちの国内情勢は、約25年にわたる毛沢東の指導を体現化したもの、といえる。

軍事関係では、「政権は銃口から生まれる」という同氏の軍事思想の下、1958年の台湾・金門島への砲撃、59年の対インド紛争、64年の核実験、67年の水爆実験と、軍事力を絶えず強化し続けてきたし、経済関係では58年から「大躍進運動」、すなわち労働力を投入しさえすれば生産力は飛躍的に増大するという、急進的な社会主義建設政策が採られてきた。さらに「階級闘争を忘れてはならない」というスローガンの下、「資本主義の道を歩む、党内の実権派」をうち倒すことを命題とした、熱狂的な大衆政治運動である「文化大革命」が、65年から10年以上にもわたって繰り広げられ、現代中国の社会全体に大変動を引き起こした。

その後は、トウ小平氏による「改革・開放」政策が現在まで継続して採られ、経済力を高めることによって、社会主義の敗北を見たソ連・東欧の波を避けるという路線を踏襲している。しかし、89年6月には北京市の天安門広場で、同年4月に死亡した胡耀邦前総書記の名誉回復運動をきっかけとして、民主化運動を進める学生らに対し、トウ小平らの意を受けた人民解放軍が無差別発砲による鎮圧を強行し、多数の犠牲者を出した「天安門事件」が発生した。この事件の結果、中国は人権抑圧国家とのイメージが広がり、国際的孤立を招くこととなったが、その後は徹底した反体制勢力の抑圧と、これまでの改革・開放路線による経済効果を武器に、不安定要素を残しながらも社会情勢を保っている。

一方、新中国成立後の日中関係については、72年に田中総理により日中国交回復がなされ、以後順調に推移しているが、両国間の継続した課題といえば、「歴史認識」「台湾問題」そして「境界画定、尖閣問題」の3つに集約される。

中国側は「過去を鑑として未来を拓く」との姿勢から、「歴史認識」を重視しているが、これは日本の将来(軍国化など)に対する警戒心によるものと考えられる。

 

 

 

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