6.3 松川浦における物質収支
現地における水質調査結果から、潟湖内をひとつのボックスとして物質収支の計算を行った。
1) 計算方法
潟湖内において物質現存量を変化させる要因としては、河川からの流入負荷、潮流に伴う潟湖内への出入り(移流)があげられる。流入負荷は潟湖内の物質を増加させる要因となり、移流は上げ潮時には海域から物質を供給、下げ潮時には海域へ流出させる要因となる。また、潟湖内では生物による物質の取り込み、沈降、溶出などが行われるため、これらも水中の物質量を変化させる要因となる。
潟湖内における物質収支は(5)式によって表される(Matsukawa and Sasaki, 1986)。なお、Matsukawa and Sasaki(1986)では(5)式右辺に拡散項を加えているが、松川浦は閉鎖的な地形の潟湖であり、拡散による物質の出入りはほとんどないと考えられるため、ここでは考慮しないものとした。
ΔCV=Q+A+P……(5)
ΔCV:一定時間内の潟湖内の物質現存量の変化量
Q:河川流入負荷量
A:移流に伴う流出入量
P:生物の取り込み、沈降、溶出による生成・消失量
現地調査の結果からΔCV、Q、Aを求め、ΔCVからQ、Aを差し引くことにより、一定期間内に潟湖内で生成・消失した物質量(P)の算出を行った。計算は図-6.7に示す2つの期間のそれぞれについて行い、これらを合計して半日の収支を求めた。
ΔCV、Q、A、Pの算定式を(6)〜(9)式に示す。時間1と時間2の間の物質現存量の変化量(ΔCV)は、潟湖内における水質の平均濃度に潟湖体積を乗じてそれぞれの時間における物質現存量を求め、この差から算出した((6)式)。流入負荷量(Q)は、河川(宇多川と小泉川)における濃度に流量を乗じて求めた((7)式)。また、移流量(A)は、時間1と時間2の間の潟湖体積の変化量が潮汐によって出入りした水の量であるとみなし、潟湖入口の地点(St.8、9)における表層とB-0.1mの平均濃度にこれを乗じることによって求めた((10)式)。
ΔCV=C2・V2-C1・V1………(6)
C1、C2:時間1、2における物質濃度
V1、V2:時間1、2における潟湖体積