また、トリトンX-100を今回の濃縮方法に適用するにあたって、最も問題であったのは、吸着せずに人工海水と一緒に流れてしまう部分がだいぶみられたことである。このままでは定量的に解析することが難しくトリトンX-100については、本方法を適用することができない。界面活性剤の性質に依存しているのか、他の界面活性剤ではどうなのかも含めてさらに検討する必要がある。
3. 3-エチルアニリンを添加した人工海水・濃縮画分の培養細胞に対する障害性
3-エチルアニリンは今回使用したC18カラムに吸着し、適当な溶媒による溶出・濃縮がきちんとなされたと考えられる結果となった(図44〜図46)。LDH試験の結果、エタノール・溶出画分に明らかに強い細胞障害性が検出され、その障害性の強さは希釈濃度依存的に減少したので、3-エチルアニリンはこの画分に含まれていると考えられた。ペンタクロロフェノールとは逆にエタノール/エーテルの混液・溶出画分には障害性は認められず、エーテル画分にはエタノール・溶出画分の40%程度の細胞障害性が認められた。細胞株間での傾向は一致していた。中でもNRKに対する添加区では感度も高く明確な結果を示した。
一方、細胞増殖に対する阻害活性をみると、エタノール・溶出画分に3-エチルアニリンの多くが溶出されていると考えられる点では、LDH試験と同様であったが、エタノール/エーテルの混液・溶出画分にも全く溶出していないのではなく、弱い影響を与える程度の3-エチルアニリンは存在すると考えられる結果であった(図47〜図49)。
最後に、参考として濃縮画分を添加した際の細胞の形態変化を写真に示す(図50)。この例はNRK細胞の位相差顕微鏡写真で、Aが順調に増殖している時の状態である。そこにペンタクロロフェノールを含む溶出画分を添加した結果、細胞は基底面からはがれてしまうこと(接着・伸展能力の異常か?)、また球形化と続いて起こる細胞質の萎縮が明確にみられる。