また、エタノール画分にもエタノール/エーテルの混液と比較すると量は少ないけれども、溶出していると考えられる。3種類の細胞株の間で障害率に違いは認められたが、エタノール/エーテルの混液・溶出画分の細胞障害率が最も高いという基本的な傾向は同様であった。NRK細胞を対照とした場合、エタノール/エーテルの混液・溶出画分の示す障害率は濃度依存的あったのに対して、HeLaとGF-Scaleでは、最も濃縮倍率の高い50倍を添加した時の障害率が44.9%と38.1%という低い値なのに対し、濃縮倍率16.6倍(すなわち50倍の試料を3倍希釈したもの)では80%前後の高い障害率を示した。
この理由は明らかではない。その後の3倍希釈系列、すなわち濃縮倍率5.5倍および1.8倍添加区の障害率が濃度依存的に低くなっていることから仮定すると、50倍試料ではペンタクロロフェノールの濃度が高すぎて今回の測定系には適用できない変化を起こしたことも考えられる。濃縮倍率50倍で添加した際の同様の異常値は、3-エチルアニリンの実験区でも認められた。
次に、細胞の増殖阻害活性を検討した(図35〜図37)。この試験でもエタノール/エーテルの混液・溶出画分による阻害は明確であった。エタノール/エーテルの混液・溶出画分を添加した場合は、細胞は最初の植え込み数よりも大きく減少して、いわゆる強い影響がみられた。これに対し、エタノール溶出画分およびエーテル溶出画分の添加では、前節の標品を用いた実験で低い濃度を添加した時に認められた影響が明確に現れた。これらのことからも、ペンタクロロフェノールはエタノール/エーテルの混液によってそのほとんどがカラムから溶出され、濃縮されたと考えられた。
2. トリトンX-100を添加した人工海水・濃縮画分の培養細胞に対する障害性
トリトンX-100の場合、カラムからの溶出過程はペンタクロロフェノールの場合とは大きく異なっていた(図38〜図40、図41〜図43)。トリトンX-100は最初に添加した蒸留水によって多くの量が溶出し、それに続いて添加したエタノールによって残りのほとんど溶出したと考えられた。