そこで、C18カートリッジカラムを通す前にこれらの物質を取り除く必要がある。現実に予備的に行った沿岸海水(舞根研究センター前の岸壁から採取したもの)では、この濾過を行わないとC18カートリッジカラムが詰まってしまい使用できなくなった。すなわち、沿岸海水を試料とした場合は必ず必要な操作ということで、実験の再現性を確認する意味も含めて今回の人工海水試料でも行った。他の種類の濾紙ではなく、ガラス繊維濾紙を選んだ理由は今回使用した類いの化学物質はガラス質に吸着しにくい性質を有するとされているので、濾過過程でのロスを少なくしたいと考えたからである。
次の段階で、Sep-PakC18カートリッジカラムに試料を通した。ここでは試料を流速が重要であり、今回は毎分5mLで行ったが、毎分10mL以上の流速になると化学物質が吸着せずにリークする量が明らかに増加した。従って、全量をカラムに通すのに時間はかかるが、できるだけゆっくりとした流速を設定することが望ましい。次に、カラムに通す試料の量であるが、今回の研究では一貫してウォーターズ社製のSep-Pak Plus・Long Body型というC18カートリッジカラムを使用した。標品の化学物質を含む人工海水試料では10Lを通した場合でも化学物質の大きなリークは認められなかったが、沿岸海水試料の場合、7L〜8L程度を通したところでカラムが詰まる現象や化学物質が吸着せずにリークする状態がみられるようになった。従って、再現性のある実験を行うには、5L程度の量を通すことが適当であると考えられた。
試料をカラムに通し終わったら、直ちに溶出操作を行った。溶出溶媒はこれまでも述べてきたように極性の異なる4種類、蒸留水・エタノール・エタノール/エテル混液(1:1)・エーテルである。各々10mLを通した。溶媒を交換する間に、カラムの中が乾燥しないようにすることも重要であった。各々の溶出画分はガラス試験管に保持して、遠心式濃縮機による濃縮操作に供した。