(d) C18カートリッジカラムを利用した化学物質の濃縮方法の確立とその方法を利用した化学物質添加人工海水からの濃縮画分の細胞に対する毒性・障害性の検定
【実験方法】
前の節において今回選定した3種類の化学物質について細胞に対する毒性・障害性を確かめることができた。この結果をふまえた上で、本節ではこれらの化学物質を人工海水に添加した混合試料を作製し、この試料の濃縮に関してC18カートリッジカラムを用いる濃縮方法が適用できるかを検証する。
図31に海水試料に混合・懸濁した微量化学物質の濃縮方法についてのプロトコールを示す。最初に化学物質を添加するための人工海水の調製を行った。今回は人工海水の成分としてマリンアート・バリアリーフ(千寿製薬)を用いた。これを規定通りの濃度になるように超純水に溶解したものを用意して、活性炭のカートリッジ(オルガノ)に2回通した後、さらに孔径0・2μmのメンブランフィルター(日本ミリポア)で濾過した。このように調製したのは添加する化学物質以外の成分で細胞に影響を与えるものをできるだけ排除したいと考えたからである。
次に、調製済みの人工海水に対して3種類の化学物質を添加した。最終濃度は各々以下の通りである。これらの濃度の設定は、前節の結果を基にして「全部の量が濃縮・回収されたと仮定すると、細胞障害率100%をホすと考えられる値」と決めた。
1. ペンタクロロフェノール:100μM
2. トリトンX-100:0.1%
3. 3-エチルアニリン:10000μM
次に、この化学物質添加人工海水をSep-PakC18カートリッジカラム(ウォーターズ)に通す前に、孔径O.5μmのガラス繊維濾紙で濾過した。この操作を行った意味は清浄な人工海水の場合は問題はないのであるが、実際の沿岸海水では浮遊生物をはじめとして様々な有機懸濁物、あるいは粒子状物質が含まれていると考えられる。