しかし、ペンタクロロフェノールの濃度が10μMになると、生存率は59.4%と大きく低下し、100μMではほとんどすべての細胞が障害を受けて死亡した。また、3種類の細胞株における感受性の比較では前節で示した溶出溶媒の場合と同様にGF-Scaleが最も感受性が高く、NRKもGF-Scaleに近い値を示した。
次に、細胞の増殖阻害活性を検討した(図22〜図24)。この試験でも阻害の程度などについて傾向はLDH試験に類似していたが、低い濃度でも影響が明確に現れることが明らかとなった。すなわち、HeLaの場合、0.1μMの濃度では増殖阻害はほとんど認められないが、1.0μMの濃度になると細胞増殖はみられるものの、その増殖速度は対照や0.1μM添加の場合の約45%に低下した。10μMでは増殖できずに細胞数は減少し、100μMではほとんどすべて死亡していた。
2. トリトンX-100の培養細胞に対する障害性
トリトンX-100の細胞に対する障害性は非常に強く、LDH試験において今回の添加濃度で最も低い0.001%でも部分的な障害が検出された(図16〜図18)。また、トリトンX-100添加の特徴として細胞株によって障害の現れ方に違いが認められた。トリトンX-100に対しては、NRKが最も弱く(すなわち感受性が高く)0.01%での生存率が12.9%と大きく低下し、0.1%で生存率は0となった。一方、HeLaとGF-Scaleの感受性はほとんど同等で0.1%添加でも3.2〜5.1%の細胞が生存していた。
LDH試験でみられた細胞株の間の感受性の違いは細胞増殖の阻害活性試験でも確かめられた(図25〜図27)。ただし、この試験ではNRKとGF-Scaleの感受性がほとんど同じであったのに対して、HeLaは比較的トリトンX-100の毒性に強く、0.001%の添加では明確な細胞の増殖が認められた。しかし、増殖の程度は低く無添加の対照と比較すると約54%に留まった。NRKとGF-Scaleでは0.001%の添加でも細胞数は減少し、増殖はみられなかった。