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そしてこの障害性は濃度依存的で、添加濃度が1%と低くなると細胞障害率も大きく低下した。しかし、今回試験をした3段階の濃度の中で最も低い添加濃度0.5%であっても細胞に対する障害率は0にはならなかった。

次に、細胞株ごとに見ると、その障害の現れ方に関する傾向は類似しているが、溶媒成分に対する感受性の強さには大きな違いが認められた。すべての溶出溶媒に対して最も感受性が強いのはGF-Scaleであると考えられる。また、NRKもGF-Scaleと近い値を示した。逆に最も感受性が低いのはHeLaであった。感受性が低いということは裏返すと毒性成分に対して抵抗性が高いことにつながる。グラフは代表的な結果を示しているのであまり伺われないが、複数回の測定ではHeLaの結果が最も安定していた。今回求めている高感度な方法という部分では感受性の高い細胞を用いる方がよいと言える。しかし同時に測定方法(結果)の再現性の高さ、すなわち細胞を含めた使用する試薬や道具の安定性も重要な要素である。細胞株の使い分けあるいは併用が重要となることが考えられる。

次に、溶出溶媒の細胞増殖に与える影響について検討した。これは3種類の細胞株の間で数値にばらつきは認められるものの、傾向はよく類似していたのでNRK細胞の結果を代表例として示す(図7〜図9)。細胞を各ウェルに植えた日を0日とし、その翌日に溶出溶媒を添加してこれを1日目と表現した。結果は細胞数で表している。LDH試験と同様に、溶出溶媒の強い影響は添加濃度10%の時に認められた。そしてこの細胞増殖に対する阻害活性の測定では影響の現れ方を2つの観点で評価できると考えられた。その1つは、生きている細胞が最初に加えた数よりも(大きく)減少してしまう、という形で現れる強い影響である。最も顕著な例はエタノールを10%の濃度で加えた場合で5日目には生細胞はOとなった。もう1つは増殖速度が遅くなってしまい、同じ測定日の細胞数が溶媒を加えていない対照よりも少なくなる、という形で現れる弱い影響である。

 

 

 

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