きちんと手順を守って試験が行われた場合、その他の化学物質でも同様にその画分特有の変化が認められた。
LDH試験の原理は以下の通りである。何らかの作用によって細胞膜が障害を受けると細胞中に存在するLDHが培養上清に漏出する。このKDHを含む上清に基質と補酵素を加えて酵素反応を誘起した時、同時に添加したニトロブルーテトラゾリウムという物質が還元されてフォルマザンという物質に変化する反応を利用している。ニトロブルーテトラゾリウムは薄い黄色を呈色しているのに対し、反応の結果生成したフォルマザンは青紫色を呈することから、視覚的にもLDHの酵素反応が起こったことが分かる。すなわち、上清に酵素が多く存在すれば(酵素活性が高ければ)青紫色が濃くなり、逆に反応がみられなければ淡い色になるからである。
定量的には、Tween20という界面活性剤を加えてすべての細胞を壊した陽性対照(細胞障害率100%と考える)の吸光度とPBSのみを加えた陰性対照(細胞障害率0%と考える)の吸光度を測定して、この差引の値を基準とし、試料の吸光度の測定値から陰性対照の値を引いたものが基準に対してどのくらいの比率になるかで評価する。写真の例で見ると、エタノール溶出画分の濃縮倍率の高い液を加えたウェルが濃い紫色を呈していて障害率の高いことが分かる。各画分ともに写真の左から右に向かって3倍の希釈系列になっているので、希釈の度合いが大きくなって化学物質が薄められることで障害率も低くなっていることがわかる。
上述のようにして測定した3種類の溶出溶媒の細胞に対する毒性・障害性を各細胞株ごとにまとめて示した(図4〜図6)。その結果、溶出溶媒の種類ではエタノールの毒性・障害性が非常に高いことが示された。特に添加濃度10%の場合、いずれの細胞株においてもその障害率は50%を超えていた。最も障害の大きかったGF-Scale細胞の障害率は78.9%であった。また、エタノール/エーテルの混液、エーテルでも添加濃度10%での細胞障害率は高いものであった。