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使用した培養液は、HeLa細胞とNRK細胞は10%ウシ胎児血清添加イーグル最小必須培地(MEM培地、日水製薬)である。GF-Scale細胞は10%ウシ胎児血清添加DM-160AU培地(極東製薬)である。

細胞の培養にあたって注意したことは、なるべく同じ継代数の細胞を毒性試験に供することができるようにすることである。まず最初に大量培養を行って増やした細胞を小分けにして-80℃で凍結保存した。そして、毒性試験に供する時は凍結してある細胞を溶解して再培養をしたものを用いた。凍結から溶解した最初の細胞は凍結障害を受けている可能性があるので、これらは試験には用いずに必ず一度継代を行って良好な状態になった細胞を試験に供した。

次に、標品の化学物質としては以下の3種類を用いた。

そのうちの2種類は農薬の製造や化学合成の過程で用いられ、それ自身も殺虫剤や抗菌剤としての効果を有することが知られているペンタクロロフェノール(pentachlorophenol)と3-エチルアニリン(3-ethylaniline)である。これらの物質は培養細胞に対して毒性・障害性を不すことが明らかにされている。しかし、海水に添加して混合・懸濁した場合についてはまだ検証されていない。

もう1種類は非イオン性の界面活性剤であるトリトンX-100(Triton X-100)である。この物質は細胞膜に対する障害性が強く、実験的に細胞を溶解する時に多用されていることから選定した。

次に、本補助事業で購入した備品について、その用途を簡単に述べる。

 

1. 海水試料濃縮システム

これは遠心式濃縮機(タイテック社・VC-96N)を中心とした試料を濃縮するためのシステムで、カラムから溶媒によって溶出された化学物質をなるべく変性させずに溶媒のみを除去することで化学物質の濃縮度を高めることを目的としている。有機溶媒によく解ける脂溶性物質でそれ自身は蒸発しないような物質、例えば微量金属の誘導体などの濃縮に最も適している。しかし、今回選んだ標品はそれ自身も溶媒とともに蒸発してしまう可能性が考えられたので、水層を作るなど少し工夫した。

 

 

 

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