当然のことながら細胞が死ねば細胞の増殖はみられなくなるから、細胞死を導くような強い毒性の影響もこの方法の結果に反映してくることになる。ただし、この時は生細胞の減少という形で評価することにより、強い毒性と弱い毒性は区別できると考えた。
3つめは、微量化学物質の影響で細胞の変性が起こった結果、形態が変化することを顕微鏡によって観察する方法である。この方法を併用した理由は以下の通りである。先の2つの方法では細胞を集団として扱っているので、1つ1つの細胞がどのように影響を受けているのかを可視化したり、表現したりできない。また、例えば異なる物質が影響要因である場合上の2つの方法で測定した結果、死亡率や増殖阻害の程度が量的には同じであっても、質的には異なっている可能性がある。そこで、細胞の変化を顕微鏡下で詳細に観察することにより、その質的な違いの一端を定性的に少しでも明らかにできればより詳細な影響の評価につながるのではないかと考えたことによる。しかし今回の研究では、細胞形態の変化についての判断基準を作るまでには至らなかったので、評価方法としては参考程度のものに留まった。
また、当初の計画では上記の方法を適用して、実際の海水試料の測定を行うことを考えていた。しかし、方法の検討・確立に手間取ったため、採水は11月20日と12月9日の2回、かき研究所舞根研究センター前の岸壁から行ったのに留まった。すなわち、評価をするにはまだ検討材料に乏しい段階である。従って、本年度実施した実際の海水試料の測定結果については、特に項目を設けることはせず、後述するその他の実験結果の中で触れることにする。
具体的な研究の実行手順としては以下の通りである。
1. 微量化学物質の濃縮方法と化学物質の毒性・障害性の評価方法の確立のため、実際に濃縮などを行う前に検証しておくべき項目がある。策一に、それは化学物質を捕捉したカラムから溶出を行う時に用いる溶媒自身の細胞に対する毒性・障害性を明らかにしておくことである。