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活性炭は今回対象とするような有機化合物を非常によく吸着することが知られているけれども、吸着した物質を再溶出することは困難であるとされている。そこで検討の結果、吸着するための素材としてC18という化合物を選んだ。吸着および溶出効果を調べるため、C18を詰めた固相カラムを用いて細胞に対して毒性を示すことが知られている化学物質を人為的に添加した人工海水を通した結果、毒性物質はC18に吸着してカラム内に残り、一方人工海水の成分のほとんどは素通りした。そして、C18に吸着した毒性物質はエタノールとエーテルという有機溶媒によって効率良く溶出することができた。

次に、採取された微量物質の毒性・障害性を調べるために、実験動物の代わりに培養細胞を被験試料とすることを試みた。従来の研究で、毒性を有する化学物質に対して感受性を示すことが知られている2種類の培養細胞株を含む4種類を対象とした。毒性あるいは障害性の判定方法としては毒性の強さを段階的に評価できると思われる3つの方法を考えた。

1つは、細胞が細胞膜に障害を受けて死亡すると通常は細胞内にある乳酸脱水素酵素(LDH)が細胞の外に漏出する性質を利用して、微量物質と細胞を反応させた後の培養上清に出てきたLDHの酵素活性を測定し、その酵素活性の強さから微量物質の毒性の強さを算出するものである。すなわち、毒性が強ければ強いほど多くの細胞が死に至るので、培養上清に漏出するLDHの量も多くなり高い酵素活性として検出されることになる。活性の強さを基準としているため、毒性の強さを定量的に表現できる方法である。

2つめは、細胞を死亡させるには至らないが、何らかの影響により細胞の増殖を阻害する障害性の評価である。この方法も生細胞数の変化を記録することで定量的な評価を行うことができる。細胞の増殖を阻害する毒性の方が死亡に至らしめる毒性よりも弱い場合でも検出できるのではないかという判断で先のLDH活性の測定とこの判定法を併用することにした。

 

 

 

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