2. 事業の遂行に関する内容
(1) 事業計画の概要
環境中に放出され沿岸海水に混合あるいは懸濁していると考えられ、1つ1つは微量であるが、生物に対して毒性・障害性を示す化学物質の多くを効率良く捉え、生物検定試験に用いられる量に濃縮するための方法としてカラムクロマトグラフィーを用いる。この目的に合致したカラムの選択と度捉えた後に選択的に溶出した毒性物質の濃縮方法の確立する。次に、得られた濃縮化学物質の生物に対する毒性・障害性を判定、評価するために培養細胞を実験動物の代替試料とした生物検定法を行う。検定の方法として培養細胞に適した方法の検索、毒性物質に対してより鋭敏で再現性のある反応を示す培養細胞株を選択するための感受性試験を行って、これらを統合した濃縮毒性試験法を確立する。そして、この濃縮毒性試験法により得られた結果が従来の実験生物を用いた検定法の結果と一致するのか、あるいは類似した傾向を示すのかを文献調査で調べるとともに、感度の点や簡便性の点を中心に方法の有効性について評価する。
(2) 調査研究の内容
a. 概説
本調査研究では、まず最初に、海水試料に混合あるいは懸濁していて、生物に対して何らかの毒性や障害性を示す可能性がある微量な化学物質を海水中に高い濃度で存在する塩類の影響をできるだけ排除しながら効率良く捉える方法を模索した。微量な毒性化学物質だけを取り出すには、これらの物質の多くの成分が有機化合物であることを考慮して化学的な親和性の違いを利用することを試みた。すなわち、有機化合物をよく吸着する一方で、無機塩類は吸着しないような素材を詰めたカラムに微量な毒性化学物質を混合した海水試料を通して毒性成分を一旦カラムの中に捕捉する。続いて海水の成分、特に塩類を良く洗い流してから、適切な溶媒を用いてカラムの担体に吸着してカラム内に保持されている毒性成分を溶出する方法が最も適当であると考えられた。