このような複雑な波浪を表現するために有義波という概念が導入されたが、数値波浪予報モデルでは更に複雑なスペクトルが利用されている。スペクトルは、複雑な海面変化を、周期、波高、波向の異なった多くの正弦波の重ね合わせで表現し、これらの正弦波の成分のエネルギー分布を、周波数並びに波向別に示したものである。
スペクトルに対するエネルギー平衡方程式に基づく予測法を、スペクトル法と呼んでいるが、方向スペクトルの全成分について計算が行われるため計算量が膨大で、大型コンピュータの導入により初めて実用化した予測手法である。
波の伝播における波どうしの相互作用は非線型であり、これをほとんど無視した第1世代モデル、パラメータ化して取り扱った第2世代モデル、可能な限り理論的に取り扱おうとしている第3世代モデルという順序で発展してきている。
(2) データの収集
(ア) 一般船舶による観測および通報
波浪観測資料の多くは、海上気象観測の一部として一般船舶と漁船から通報されるもので、海岸無線局や国際海事衛星INMARSATを経由して集められる。船舶や漁船から通報されるデータは目視による波浪観測結果で、観測項目には
・波向(10゜単位)
・周期(ls単位)
・波高(0.5m単位)
の3要素があり、風浪とうねりを分けて観測しFM13 SHIP海上実況通報式に従って観測されている。ここで、うねりは卓越する2つの成分まで通報される。
(イ) 気象庁による観測
気象庁独自の観測データは次のものには、次のものがある。
・海洋気象観測船(6隻)
・海洋ブイロボット(4基)
・沿岸波浪計(11基)
・その他、沿岸の気象官署・アメダスによる風
などが実況解析に利用されている。
海洋気象観測船は、一般の船舶同様に波浪の目視観測を含めた海上気象観測通報を行うとともに、船用波浪計搭載してより高精度な観測が行われている。通報されるデータは、有義波の波高(0.5mおよび0.1m単位)と周期(1s単位)である。