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・大洋表面海流

1] 優勢な海流を表示する全大洋のパイロット・チャート

2] パイロット・チャートから作成された優勢な海流の月ごとのグリッド化データベース(コンピューター航海シミュレーション用)

3] JMAからの黒潮および親潮の中心部分の位置および強さの解析データ

4] NWSからの通報およびファクシミリチャートのメキシコ湾流の位置の解析データ

 

(4) 推薦航路の選定とこれに関するコンピューター・プログラム

WRS会社において、推薦航路の選定は、先に述べた各種資料を基に気象・海象についての豊富な知識、船体と航海に関する知識を十分に備えているルート・アナリストと呼ばれる専門家が種々のコンピューター・プログラムを駆使して、解析・検討することにより行われている。

ここでは、実際にルート・アナリストがどのようなコンピューター・プログラムを用いて推薦航路を選定していくのかその概要について説明する。

(ア) 推薦航路の選定

船舶の最適航路については、1957年ジェームスが波浪図と船舶の性能曲線(Performance Curve)を使って航路選定を行う試行を初めて行った。彼は波高と波向(向かい波・横波・追い波の3段階に分類)に対する船舶の速力の自然減速量を求める手法を開発した。そして波高・波向と性能曲線を使ってある地点から放射状に船を進めてその線が12時間ないし24時間後に到達する位置を計算し、それらを連ねた線を等時間曲線(Isochrone or Time Front)とした。

そしてこの等時間曲線上に垂線を立て、その方向に波高・波向と性能曲線を使って12時間ないし24時間船を進めて自然減速量を計算しながら船の到達位置を算出した。これが2日後の船の等時間曲線である。この作業を繰り返して仕向港までの等時間曲線を求めて最後の曲線から逆に遡って最適航路(最短時間航路)を選定した。この方法は、等時間曲線法と呼ばれている。

以来最適航路を求める手法として変分法、ポントリァーギンの最大原理の応用、ダイナミック・プログラミングなどを用いた解法が多くの研究者によって試みられている。

しかしながら、最適航路は、いずれの手法においても全航程の気象・海象の予報の精度に大きく左右される。

船舶が太平洋を横断するには、高速船(20ノット)で約10日、中速船で12〜13日、低速に至っては18日程度に及ぶ長期間の航海となる。この間の気象・海象の予報には、過去の風・波浪の資料の統計に基づき季節ごとあるいは月〜旬ごとに予報を行う気候学的な方法とコンピューターによるシミュレーションを用いて気象・海象のメッシュ予報を行う気象学的な方法とがある。実際には、これらを併用して最適航路の選択が行われることになる。

 

 

 

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