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このような環境の下、低質燃料の使用、省力化、混乗の導入、便宜置籍化船舶の運航経費の節減が厳しく求められ、船舶の運動能率の向上も重要な課題となってきた。一方、この時代になると学術的な研究も活発となり、研究者の層も厚くなっていった。これに伴い、気象・海象の予測、船舶の耐航性能の評価技術も向上していった。

気象・海象の予測については、国際的な規模での観測、情報の交換、気象衛星の開発・利用、高層気象の研究・情報提供が、コンピュータの情報処理能力の急速な向上も伴い、多くの学術研究上の成果、予報制度の向上、予報期間の延長へとつながっていった。

また、船舶の耐航性能についても波浪中における船速や船体運動がかなりの精度で推定できるようになり、WRに必要となるデータの収集・解析が行われた。

これらの学術的な研究の発展により、以前に比べ格段に効果的なWRが可能になっていった。

日本の船社がWRに関する商業ベースのサービスを本格的に受け始めて行ったのも、1970年代の中頃のことであった。

我が国においても1970年代から(財)日本気象協会が本格的にサービスを実施している。

 

(2) ウェザー・ルーティング・サービスの実際

船長が最善の航路を選択する場合に考慮できる要因として、船のエンジンや航海機器(レーダー、LORAN、SATNAV、GPS等)の状態および積荷の種類など航海を始める段階ですでに分かっているものがいくつかある。

しかしながら、最適航路を決定する上で重要な航海中の気象・海象については、船長が最初に航路を決定する時点ではまだ分かってはいない。大洋を航行する船舶で得られる情報としては各国が放送している気象ファクシミリ、無線または音声による注意報・警報等が主なもので、船上における気象・海象情報の入手には自ら限界がある。しかし、できるかぎり最善の航路を選択するためには、長期的な予想天気図をはじめとして波浪予報、海潮流の予想、霧予報、海水・流氷、気温・水温の見通しなど、より多くの有効な資料を入手することが望ましい。

船長が最適航路を選択する際、船舶側では入手が困難なこれらの情報を陸上から提供することにより、船舶の安全性を確保し航海時間の短縮および燃料の節約による運航効率を高め、さらに船体および貨物・甲板機器等の損害の軽減、乗組員の快適性の向上等を図るとともに、推薦航路の提供を行うサービスとしてWRSがある。

 

 

 

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