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3.4.2 CO2排出量低減オプションの実施体制に関する検討

 

ここでは、陸上での運輸部門におけるCO2税導入、燃料消費量割り当て制度、地球環境への負荷を定量化した上で公表を義務づける制度、など政策的なインセンテイブに関しての情報などを入手し、国際的な制度への導入の可能性について検討する。

COP5においてAIJ(共同実施活動 Activities Implemented Jointly)およびCDM(Clean Development Mechanism)という二つの国際的な国家間の協調実施について枠組みについては具体的な進展はなかった。

そこで、現在電力会社など民間企業と豪州ロシアなどの企業間および行政の間で一部契約が進んでいる排出権取引について情報を収集し、船舶運航への適用について考える。

 

排出権取引が、市場として機能しているのは米国SO2排出権について取引するシカゴ市場だけである。ここでは、米国内で総量規制がなされているSO2排出権について売買ができる。排出権を売却できるのは、連邦より施設ごとの排出総量を割り振られた電力会社など一部の大規模SO2発生施設の管理者のみである。一方、購入側は割り振られた発生側事業者だけでなく、地方自治体や自然保護団体も購入可能である。つまり、地方自治体が管理内の排出権を税金などで購入し、これを転売せずに保管(stock)してしまえば、地域内のSO2発生量は連邦レベルで決定した総量規制の枠組みよりもさらに減少することが期待できる。本手法はCO2においても可能になると考えられ、陸上のCO2排出権を海運業界もしくはIMOといった団体が購入することは将来可能になると考えられる。

 

一方、COPの枠組み内では、第17条に規定があるものの、詳細については全く未定である(ただしCOP内で決定されるため条約が発効する前に、詳細を決定することもできる)。前述のように至近のCOP5の議論においても、具体的な実施内容についての進展はなく、植林などによるCO2吸収量の定量的評価についても先送りされた。つまり、現状では植林事業などで、CO2排出権を購入してもその権利による排出可能量は未定である。従って、IMOの枠組みも未定である現状で、排出権取引の枠組みを予想することは、きわめて困難である。

 

しかし、現在の絶対量削減を大前提とする条約枠組みに反対の立場を取る米国では、2008年(第一コミットメント期)以前に企業の自主参加に基づく早期排出権削減クレジットの取引制度を国内的に創設することを考えている。

 

 

 

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