日本財団 図書館


3.2 船舶単体の改善策に関する調査

 

一般的に、同一船種においては船舶が大型になるほどton-mile当たりの輸送効率は高い(同一運航速度下における輸送ton-mile当たりの燃料消費量が少ない)。また、船齢別には建造年の新しい船舶ほど、新造時における輸送効率は高い。輸送効率の向上は船型の改良などによる推進効率の向上、機関単体の熱効率の向上の複合的な効果によるものであるが、ここでは過去10年間における両者の向上を検討する。また、聞き取り調査などにより、将来において有望と考えられる輸送効率改善技術を抽出した。

 

3.2.1 主機関熱効率の改善策

3.1で行った船舶明細書の整理から、船舶の輸送効率は平均的には1970年代から1990年代までに20%程度向上したが、ここ数年は横ばい状態にある。1990年代までの輸送効率の向上には、主機関の熱効率アップが寄与するところが大きいと考えられる。

Fig.14に示すように、1970年代に製造された低速2サイクルディーゼル機関と1990年代に製造された低速2サイクルディーゼル機関を比較した場合、燃料消費率(SFC)は150g/PSh程度から120g/PSh程度へと、約20%程度減少している。さらにディレーティングを行った場合は25%程度の減少が見られる。これは、Fig.15に示した最高燃焼圧力の上昇、機関回転数の低速化、ロングストローク化などによるものである。Fig.16に示すように低速4サイクル機関においても15%程度燃料消費率の向上が見られた。

なお、同時に機関重量も軽減化が進み、船舶全体での輸送効率改善に繋がっているものと考えられた。

しかし、同図によれば近年は4サイクル機関、2サイクル機関ともに熱効率の向上が止まりつつある。これは、以下示す複合的な要因によると考えらる。仮に燃料価格が大幅にアップするなど、外的要因があれば再び燃料消費率重視の技術が開発される可能性もある。

 

●燃料価格が安値安定している近年においては、機関に対する要求される性能の重点が、メンテナンス性の向上、機関そのものが安価であること、低質燃料に対応可能であること、といった点に移行しつつあること。

●IMOにおいてNOx規制がスケジュールされており、NOx排出量と燃料消費率とはトレードオフの関係にあるため、両者の妥協点を見出さなければいけないこと。

●コンテナ船などにおいて、高速化が要求されており、機関の出力増大が求められていること。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION