6.2.5 海洋緑化計画(ラピュタ注1)計画)
(1) 構想の概要
化石エネルギーの使用量の増大に伴って、地球環境の温暖化が問題となっている。21世紀に向けて地球環境問題の重要性に関する認識が高まるなかで、CO2排出量削減のための様々な取り組みが行われるようになってきた。その中で、地球の表面積の7割を占める海洋を利用する方法に期待がかけられている。しかし、海洋を利用した地球温暖化対策の取り組みには一定の方策がなく、その方向性の検討は、始まったばかりであると言えよう。
ここで対象とする海洋緑化計画は、図6.2.5-1に示すように、太平洋中央部に赤道直下であるにもかかわらず海洋砂漠と呼ばれる生物生産の乏しい海域が存在することおよび、その直下の深層水(1,000メートル程度)は極めて栄養塩に富んでいることに着目し、両層を直接結び、深層水を人工的に表層に湧昇させることで、該当海域の生物生産性の向上を目指すものである。さらに本計画では、図6.2.5-2に示すように深層水の汲み上げを、海洋表層と深層の自然温度差エネルギーを利用して行うという独自の手法を目指す。
(2) 海洋新技術の意義
海洋緑化計画(ラピュタ計画)の要点は、以下の3点にある。
1] 海洋表層と深層の自然温度差エネルギーを利用した深層水の汲み上げ方法による。この方法は、H.ストンメルによって提案されたが、未だに実証されていない。新しい深層水汲み上げ技術の確立が必要である。
2] 太平洋中央部に赤道直下であるにもかかわらず海洋砂漠と呼ばれる生物生産の乏しい海域が存在することが知られている。かつ、その直下の深層水(1,000メートル程度)は極めて栄養塩に富んでいる。この両層を直接パイプによって結びつけ、深層水を人工的に表層に湧昇させることができれば、生物生産性を向上できる。
3] この海域に、深層水汲み上げパイプ群を設置する。汲み上げた深層水と共に漂流する海中浮遊施設は、海洋の生物生産を飛躍的に増大させると共に、汲み上げられた深層水塊中に海洋森林と牧場(魚介類および海藻の養殖)を実現し、いわゆる浮遊するラピュタを海中に実現する。
注1)ラピュタ:スウィフトの小説「ガリバー旅行記」に出てくる飛行する浮島。そこで生活する住民は、数学と音楽に熱中し、農業、工業など労働を考える必要がない理想郷である。近年、宮崎駿によってラピュタが天空の城として映画化された。