(3) 内外の研究状況
青森県むつ市の日本原子力研究所では、1999年9月より、海水に含まれるウランを特殊なフィルターを使って採り、資源にする実証実験が行われている。それまでも海水をポンプで汲み上げるなどの試みは行われていたが、海水1トン当たりのウラン量が数mgと希薄で、多大な電力を消費することなどから非効率で実用化されていなかった。今回の実験では、オイルフェンスに使用されるポリエチレン繊維が注目され、これに放射線を照射して重金属を選択的に捕集する機能を持つフィルターの開発が行われた。実験では、津軽海峡に約240kg分のフィルターが沈められ、ウラン、バナジウムが採取される。引き上げた後、塩酸処理してこれら希少金属類が分離される。試算では、フィルターlkg当たり20日間で約lgのウラン採取が可能であるとされている。コストは、ウランlkgを採るのに、従来のポンプ方式では15〜16万円かかっていたのが、このシステムにより約3万円に引き下げられる。
なお、海水からのウランの採取については、微生物の死骸から生成したバイオビーズによりウランの吸着を行わせる研究も進められている。
(4) 技術開発推進に対する課題
図6.2.2-2に示すように、海水中の溶存資源採取の経済性は、市場価格、溶存濃度および抽出コストにより決まる。マグネシウム、臭素、ストロンチウム、リチウム、ヨウ素等の元素を始め、モリブデン、ウラン、バナジウムまでが経済的に採取可能な状態に達している。低濃度の有用元素を利用できるかどうかは、今後の技術開発にかかっている。
図6.2.2-2において、海洋深層の方が表層よりも濃度が高い元素を表6.2.2-1に示した。Sr、V、Iについてはすでに工業化されており、深層水マイニングにより、産出量の増加が期待される。一方、それ以外の元素については、海洋深層までの濃度勾配次第では、深層水マイニングにより経済性が成り立つ可能性が秘められている。