5.4 科学研究の場としての海洋の利用ニーズ
「海洋」自体が研究対象となるケースを「科学的ニーズ」とすると、下記のものが代表例として挙げられる(表5.4-1)。
5.4.1 海洋科学研究
海洋の基本的な理解を得ることを目的とした利用である。海洋物理学(海洋循環、海洋構造、など)、海洋化学(物質循環、熱輸送、など)、海洋地質学的な研究が行われている。
5.4.2 海の生物資源の利用
有用な海洋生物資源の探索と活用するものであり、海洋生物資源を活用した機能性食品、医薬品開発、遺伝子資源の保護・応用が考えられる。
また、CO2固定バイオリアクター構築もこのカテゴリーであり、CO2モニタリングおよびCO2固定をめざした研究が進められている。
5.4.3 海の認識の向上
「地球環境」と「人間活動」の調和を求める試験場としての海のあり方もある。いわゆる「海洋社会システム」の構築である。また、海の認識を高める一手段として、最先端技術の見せ所としての海洋を取り上げたい。具体的には、海中生物資源(遺伝子資源の利用)や海中ロボットなどの先端技術のR&Dの成果を海を通して提示することにより、結果として海の認識を高めることが期待される。
5.5 今後の進むべき方向性
前節までに示した海洋の利用ニーズとその利用例を総覧すると、21世紀の海洋利用には、以下に述べる2つの潮流が存在することがわかった。
5.5.1 ローカルな海からグローバルな海へ
これまでの海の利用の多くは、陸地に近い沿岸域における深層水の利用、閉鎖地域における養殖、沿岸域の物理環境観測、沿岸域の海洋構造物利用、波浪・潮汐発電、埋め立て地利用、沿岸域の地震観測、沿岸のリゾート開発など比較的ローカルなエリアで行われていた。