(出典:原島省、功刀正行「海の働きと海洋汚染」(1997))
6.2.4章において述べるように、サンゴ礁は大気-海洋間でのCO2収支において重要な役割を果たしており、CO2固定のためのバイオリアクターとしての期待値が高まっている。また、サンゴ礁はその構造から、外洋からの波のエネルギーを分散させる上で大きな効果をもっている。さらに、サンゴヘの固着生物の多くが海水を吸入し、有機物を濾し取って自らの栄養を得ており、この生物フィルターの作用により海水の汚濁が軽減される。
近年、沖縄本土や石垣島などでは、沿岸開発に伴う赤土の流出が原因となり、サンゴ表面への土砂粒子の堆積や海水の透明度の減少からサンゴ礁が衰退を続けており、残されたサンゴ礁を保護することが急務となっている。一方で、1998年7〜8月の猛暑により生じた大規模なサンゴの白化注5)も見落としてはならない現象である。
注3)熱帯および亜熱帯の潮間帯に群落をつくる塩性植物の総称であり、世界では約90種が知られている。地域により種の数や優先種が大きく異なる。
注4)特定面積において、どれだけ多種のサンゴの属が見られるかの指標。
注5)サンゴなどから共生藻が抜け出す現象。高海水温によりもたらされる。