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3.6.2 沿岸域環境の保全

 

(1) 概要

 

沿岸域環境は、安全・防災、開発・利用、自然・生態の3つ観点に大別される。台風による高潮や高波、地震による津波、さらには海岸浸食など自然の外力が厳しい我が国の海岸であるが、国土が狭いため海岸の利用がますます進められている。そのような中で、沿岸域の環境をいかに保全するかという問題は、きわめて重要な課題となっている。一方で、低緯度海域におけるサンゴ礁やマングローブの保全についても対策が急務である。ここでは、沿岸域環境の保全に対して、環境創造と生物資源確保の観点から技術の現状を述べる。

 

(2) 技術の現状

 

1] 中緯度沿岸域での環境創造

a. 海岸緑化

海岸では強い潮風に加えて、飛砂、しぶき、海水の浸水など、内陸と異なる厳しい環境が存在し、ごく限られた植生のみが適応している。そのため、一般に海岸の緑化は困難である。海岸における植栽技術については、耐潮性の強い樹木を主体に用い、海岸線からの距離に応じて種類や密度、配列などを変化させると共に、風抵抗が少なく、林内に風を入れにくい耐潮風構造とすることが重要となる。

海岸緑化に対しては、我が国では古くから海外防災林の造成が行われてきた。17世紀より、砂浜海岸において主に飛砂の防止を目的としてクロマツが植林されてきた結果、クロマツ林は日本海および太平洋の砂地海岸のほとんど全域に及んでいる。

 

b. 砂浜造成

安定な海浜を人工的に造成し、これらを連ねて海浜全体を浸食から護る方法として、安定海浜工法が確立されている。安定海浜工法の特徴として、消波機能が高いこと、一度安定な海浜を造成すると維持が簡単なこと、海浜の利用価値が高いこと、さらには景観と生態系共に自然になじむことが挙げられる。

海岸浸食制御に安定海浜工法が適用された最初の例は、シンガポール南海岸におけるヘッドランド注1)コントロールであり、1975年までに48基のヘッドランドが設置され、約30kmの海岸の安定化に成功している。我が国では、漂砂源の減少と港湾の防波堤による沿岸漂砂の阻止のため浸食され始めた天橋立海岸において、20基の突堤工法および養浜が施工され、現在では安定な海浜群が形成されている。

 

注1)海岸における岬のような突端。

 

 

 

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