3.4.4 海洋性機能性食品・医薬品
(1) 概要
マリンバイオテクノロジーを応用した海洋性機能性食品や医薬品の研究が、近年急速に進められており、一部では実用化にまで至っている。海洋にはきわめて多様な生物種が存在することから、海洋性機能性食品や医薬品に対する応用例もきわめて多岐にわたっている。特に、海洋生物から抽出された生理活性物質であるDHAやEPA、さらにキチンやキトサンなどは、それぞれが非常に広範囲な応用性を秘めている。
(2) 技術の現状
1] 医薬品
a. 抗がん剤・抗エイズ剤
米国の国立がん研究所が中心となり、海の生物の中から抗がん剤や抗エイズ剤として有用な化学物質の探索が行われている。これまでに、ダイデムニンという微生物から取れる特殊な化学物質に抗ガン作用があることが判明しており、すでに臨床直前のフェーズ?の段階でテストが行われている。
b. 抗炎症剤
遺伝子資源としてすでに応用されている医薬品の代表として、太平洋の海綿から抽出した抗炎症剤が挙げられる。海綿中の化学物質が、虫に喰われて腫れた炎症などに効く。
また、スーパーオキシドディムスターゼという分解酵素は、炎症を治す医薬品、化粧品、食用などに用いられている。
c. 抗マラリア薬
海綿由来のアルカロイド、マンザミンAが、マウスに対するテストから、有効な抗マラリア作用を示すことが確認されている。このような結果から、マンザミンAが、きわめて有効な抗マラリア薬となりうることが示唆されている。
d. 紫外線防止
藍藻に含まれるバイオプテリングリコサイドは、紫外線を非常によく吸収する物質であることが判明している。オシラトリアという植物プランクトンは、紫外線吸収物質を誘導し、遮光膜を作って自分の体を保護している。