なお、生態データプローブには、水中における圧力、温度、地磁気、音声などのデータを取得するセンサ、および水上で緯度経度を求めるGPS受信機が搭載されている。
1] アルゴスシステムの概要
生物追跡に広く利用されている米国、フランスの共同開発による人工衛星を用いた位置及び環境データの収集システムであるアルゴスシステムについて概説する。
a. 衛星
高度830kmから870kmの極軌道を約101分で周回している。衛星2基の場合、1日6〜28回(日本付近で8〜12回)、1回8〜15分間、ほぼ同時刻に同地域の上を通過する。
b. 送信系
送信機の重量は対象生物の5%が目安とされており、海洋生物用で150から170gが使用されている。寿命は電波の発信/休止をすることにより1年以上に延ぱすことが可能である。
c. 受信形態
ランダムアクセス方式で1度に645から2,358個の送信機を処理することが可能である。
d. データ処理
衛星で受信したデータは、地上局へ送信され、世界情報処理センターへ転送後、位置計算などの処理が行われる。処理結果はインターネットを利用して平均2時間の遅れで研究者に送られる。我が国では、海洋科学技術センターのアンテナで受信されたデータを20分程度の遅れで取得することが可能である。
e. 観測例
近年の海洋野生生物の衛星追跡は、オットセイ、トド、イッカク、カニクイアザラシ、バンドウイルカ、ザトウクジラ、ペンギン、アカウミガメなどの生物に対して実施されており、各生物の生態の把握に寄与している。